国際疾病分類(ICD)改訂による病名の変更

WHOが2018年に公表した国際疾病分類により、病気の名前や病名を含む学会名が変わる動きが進んでいます。自認する性と生まれたときの戸籍上の性が違うトランスジェンダーの医療や権利などの課題を扱うGID(性同一性障害)学会の名前が、3月に日本GI(性別不合)学会に変わりました。ICDで、障害を意味するGID(Gender Identity Disorder)はなくなり、GI(Gender Incongruence)に改められています。日本語訳は性別不合とする案が出ており、学会名もGIが使われます。
日本精神神経学会は、精神疾患の病名変更を検討しています。障害と訳されてきたDisorderを症と訳すなど、患者の理解と納得が得られやすくし、差別意識や不快感を生まないことを重視しています。学会は、パニック障害をパニック症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を心的外傷後ストレス症などとする案を公表しています。
適応障害(Adjustment Disorder)を障害と訳することは、適応できない人に問題があるという誤解を生むとして、学会は適応反応症とする案を示しています。症状が固定して良くならない、不可逆なものという印象を与えて、精神疾患への偏見を助長していることへの配慮がみられます。
過去には痴呆という表現に蔑視的な意味が含まれるとして、認知症に変わりました。また、日本糖尿病学会などは、2023年に糖尿病への誤解や偏見をなくすため、新たな呼称案を英語名に基づくダイアベティス(Diabetes)とすると公表しています。病名は変わりうるもので、日本語の研究者も含めて議論していく必要があります。

(2024年5月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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