文部科学省と厚生労働省の発表によれば、2024年春に卒業した大学生の4月1日時点の就職率が前年より0.8ポイント高い98.1%で、新型コロナウイルス禍前の2018年卒、2020年卒の98.0%を上回り、1997年の調査開始以来で過去最高となっています。コロナ禍からの経済回復と人手不足を背景に、学生優位の売り手市場が鮮明になっています。ITや金融、メーカーなどの業界を選ぶ学生が多く、社会の不確実性が高まる中、スキルを身に付け、会社に頼らずにキャリアを築きたいと考えている学生が多くなっています。観光やホテルといった業界も採用を活性化させています。
政府は、原則として企業の広報活動を3月1日、面接などの選考活動を6月1日に解禁する就活のルールを定めていますが、既に内定を得ている大学生は多くなっています。大学側は就活の早期化への対応に追われ、学業への影響を懸念する声も上がっています。
就活の早期化で、留学や部活動を並行して行うのが難しくなっています。コミュニケーション能力など、社会で求められる力が十分に育つ前に就活に臨まざるを得ない状況が懸念されます。学生が自分のキャリアについてよく考えられるように、企業はインターンなどのプログラムをさらに充実させる必要があります。
(2024年5月25日 日本経済新聞)
(吉村 泰典)