女性の健康問題による経済損失

 日本の労働基準法では、1947年の制定時から生理休暇があります。世界的にみても導入時期は早いと思われますが、当時月経痛などで就労困難な女性に休暇を保障するための法律でした。生理を理由に女性が解雇されるのを防ぎ、働き続けるための現実的な制度で、実際1960年代には女性労働者の4人に1人が取得していたというデータもあります。

 しかし、厚生労働省の調査によれば、2020年度の生理休暇の請求率は1%未満でした。1985年の男女雇用機会均等法が制定されて以降、男性と同じように働かなければ、人事評価や昇進で、男性と平等に扱われない傾向が強まりました。月経による支障があることを職場でオープンに話しにくくなり、休暇を申請する女性も極端に減少しました。

 現在では、少子化対策に加え、ウェルビーイングの向上という視点が明確になってきました。背景には、リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)の動きがあります。2024年の国連人権理事会で、月経の健康を盛り込んだ決議が採択され、女性の健康課題への取り組みが、健康とジェンダー平等に対する人権の推進という点で重要だと再認識されています。

 経済産業省は、2024年に月経随伴症や更年期症状、婦人科がん、不妊治療といった女性特有の健康課題による経済損失を試算しています。欠勤やパフォーマンスの低下、休業、離職などの要素に平均賃金を掛け合わせた結果、年間約3.4兆円にのぼると推計しています。女性が長く健康に働ける環境づくりが企業にとって大切となります。働く女性の支援ニーズと企業側がニーズを把握しづらいというミスマッチが課題解消のカギとなります。

(2026年3月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です