女性のキャリア形成に伴う社会進出が少子化の大きな理由の一つに挙げられます。女性の労働参加率が高まると出生率が低下し、少子化がより深刻になると危惧する考えもあります。たしかに女性の社会進出は育児に向けられる時間を減らし、全体として出生率の低下をもたらすことになります。しかし先進国では、女性の労働参加率の上昇と出生率の上昇が必ずしも相反するものではないと考えられています。
経済協力開発機構(OECD)のいくつかの国について、1972~2012年の期間に出生率(平均的な女性が15~49歳に出産する子どもの数)と25~34歳の女性の労働参加率のとの関係をしめしたデータがあります。各国とも少なくとも70年代までは、女性の労働参加率と出生率の間に負の関係がみられています。しかし、米国、スウェーデン、ノルウェーなどではかなり早い時期から両者がともに上昇する現象がみられるようになってきています。ドレードオフ関係がなくなったわけではなく、子育てをしながら仕事を両立できる環境整備ができるようになった結果であると思います。わが国もこの30年間で女性の労働参加率が上昇してきていますが、それがいまだ出生率の増加につながっていません。女性が妊娠・出産を経験し、子育てをしながら活躍できるような環境をつくることが大切です。
(2015年1月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)