総務省の労働力調査によれば、女性の正社員が増えています。2024年上半期の正社員数は15~64歳で1,241万人となり、2003年以来21年ぶりに非正規社員の数を上回っています。上半期として5年連続で最多を更新しました。若い世代で上昇幅が大きくなっています。医療・介護のほか製造業など人手不足の業種で採用が活発になっています。
平成バブル期の1990年前後は60%を超えていましたが、女性の就労者数全体が少なかったため、正社員の人数では今より200万人ほど少数でした。その後、労働者派遣法の改正やバブル崩壊とリーマン危機後の人件費削減で非正規社員へのシフトが進み、2014年には44.3%まで落ちました。2024年までの10年間で正社員比率は6.2ポイント上がりました。正社員が264万人増えた一方で、非正規は11万人減少しました。
正社員が増えている一因は、人手不足の中で企業が女性の採用を増やしているためです。この10年間の正社員比率の上昇幅は若い世代ほど大きくなっています。25~34歳が最も大きい11.8ポイントですが、55~64歳は4.0ポイントの上昇にとどまっています。産業別に見ると、医療・福祉が最大の71万人でした。高齢化で需要が伸びる看護師や介護職員などが増えています。製造業が30万人増、情報通信業が29万人増が続いており、人手不足の業界が目立っています。 正社員が増えているのは、結婚・出産後も仕事を続ける女性が増えたことによります。出生動向基本調査によれば、第1子出産後も働き続ける妻は直近で53.8%と、20年間で2倍以上に増えています。育児休業制度の充実や女性の高学歴化などが背景にあるとみられ、女性の就業率が30代で急に下がるM字カーブ現象も解消しつつあります。
(2024年12月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)