妊娠のための教育講座ⅩⅨ 出生児体重と赤ちゃんの発育

 出生体重が2500g未満の赤ちゃんを低出生体重児と呼びます。早産の赤ちゃんや、妊娠37週以降の正期産でも妊娠週数に見合った発育がない胎児発育不全児、胎児発育不全でなおかつ早産となった場合などがあります。最近のお母さんは痩せ願望が強く、妊娠しても体重が増加しないことが多く、それによって赤ちゃんは低出生体重になりやすくなっています。低出生体重児で生まれた赤ちゃんは、将来冠動脈疾患や高血圧症、脂質代謝異常、糖尿病などの生活習慣病を発症する頻度が高くなることが指摘されています。精神疾患とも関連していると言われており、生まれてからの環境にうまく順応できずに生活習慣病を発症すると考えられています。最近DOHaD (Developmental Origins of Health and Disease)の概念が注目されています。DOHaDとは胎児期~幼少期の環境が成人期になってからの慢性疾患のリスク因子になりうるという概念です。

 一方、巨大児とは、出生体重が4000gを超えて生まれる赤ちゃんのことです。母親が糖尿病である時、子どもが巨大児になるリスクが増えると言われています。もともと糖尿病でなくても妊娠すると糖代謝異常が起こりやすく、妊娠糖尿病といわれる病態になりやすくなります。この傾向は高齢妊娠で多くみられます。出生時体重が少なくても多すぎても、赤ちゃんはその後の発育に問題が生じやすくなります。プレママは、赤ちゃんのために無理なダイエットをするのは控え、食事の偏りがないように注意しましょう。

 胎児発育不全児には、赤ちゃんに原因のあるものと母親に原因があるものに分けられます。先天奇形や染色体異常、子宮内感染などが赤ちゃんに原因がある場合です。母親の原因になるものとしては、母体の栄養障害や妊娠高血圧症候群に見られる胎盤の機能異常、さまざまな母体の合併症などが挙げられます。胎児発育不全児は出生体重が小さいほど予後が悪いのですが、周産期医療の発達により生存できる赤ちゃんも増えてきています。

(吉村 やすのり)

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