日本経済新聞のアンケート調査によれば、妊娠・出産・子育ての壁として、経済的な負担が71.3%とともに、仕事との両立の難しさが62.3%を挙げる人が多くみられました。夫婦ともに会社の生産性向上の名のもとに仕事量が増え、子育ての時間がないなど働き盛りの世代のゆとりのなさが目立っています。
そもそも経済的な問題で結婚できないと結婚そのものをためらう声もあります。この30年間の実質賃金の低下や年少扶養控除の廃止などにより、日本の子育て家庭の環境は欧米諸国と比べてさらに厳しくなっています。1割弱の人が、どのような施策でも産み育てたいと思えないと答えています。現役世代の意識を変えるのは容易ではありません。
先進国でも合計特殊出生率は右肩下がりの状況にあります。背景には子育てに関連した費用の増加や、結婚や出産を巡る価値観の変化などがあげられます。保育政策を拡充したフランスをはじめ1990年代以降に出生率が回復した国でも、近年少子化が進行しています。子育て支援策を強化すれば、少子化対策となる時代は終わりをつげ、若い世代の価値観の変化をいかにして理解するかが、今問われています。
(2024年6月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)