副作用報告の多発で接種の呼び掛けが中断されている子宮頸がんワクチンについて、日本医師会と日本医学会が、医療関係者向けの初のシンポジウムを12月10日に開いた。専門家8人が登場されたが、このワクチンの安全性や有効性を巡っては、医療界でも意見が分かれた。愛知医大の牛田享宏教授は、血液検査や脳画像に大きな異常はなく、慢性的な痛みは一般の小中高生にもあることで、不安を取り除くだけでも症状はよくなるとしている。また、日本産科婦人科学会の小西理事長も海外におけるワクチン接種の有効性を示すデータを提供している。
これに対し、信州大学池田修一医学部長は、痛みを取っても眠りすぎや記憶力低下などの脳機能障害が残るため、未知の異常が隠されているのではないかとしている。また、東京医大の西岡久寿樹医学総合研究所長も、症状の個々の原因が不明でも、症状はすべてワクチン接種から始まっており、全体を新たな病気と捉えるべきだと主張している。
世界保健機構(WHO)がワクチンの有効性を認める声明をだし、58カ国で公費による接種が実施されている。子宮頸がん患者が増えているのは日本だけで、接種が進む米国や豪州、スコットランドなどでは、がんの原因になるウイルス感染者が減ったとのデータがあることからも早期の再開が望まれる。シンポジウムの座長を務めた日本医学会の高久史麿会長は個人的には接種は続けるべきだと考えるが、副作用の出た患者への支援体制を整えることが必要であると述べている。
(吉村 やすのり)