内閣府に設けられた「少子化危機突破タスクフォース」では、少子化対策のための出生率などの数値目標を設定するかどうかの議論がなされている。会議では、出生率の数値目標の意義は見える化であり、少子化対策を優先する上でどのような施策が必要であるかを考えるために、目標値を決定するのは意義があるとする意見が相次いだ。政府の国民に対するわかりやすいメッセージとして目標設定は意義深い。
しかし、子どもを産みたいと思っても産めない人、産まない選択をしている人がいる中で、目標が独り歩きをすることも考えられ、個人を追い詰めることになるという考えもある。国が結婚・妊娠・出産・子育てなど個人の生き方に、直接介入することにつながる危険性もある。
タスクフォースの委員の考え方も様々である。出生率を回復させたフランスやスウェーデンでは出生率に目標を設けていない。子どもは社会が育てるという考えのもとに、子ども・子育てのための支援策を強力に推進することにより、その結果として出生率の回復が得られている。目標を掲げることよりも、子どもを産みたい、子育てをしたいと思える社会にするには、何が必要であるかを見える化することが大切であろう。
(2014年4月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)