成年後見制度の必要性

 認知症などにより判断能力が低下した人たちを支える成年後見の利用が広がっていません。家族のサポートが難しい独居の高齢者が増え、弁護士らへの依頼に不安を感じる人もいます。認知症患者は2030年に500万人を超える見込みです。2030年に認知症患者が523万人、予備軍とされる軽度認知障害の人が593万人と推計されています。これに対して成年後見制度の利用者は、直近で25万人にとどまっています。

 成年後見制度は、判断能力が十分でない人たちの保護を目的に2000年に始まりました。契約や財産管理を支援し、詐欺からも守ります。家族らの申し立てを受け家庭裁判所が後見人を選ぶ法定後見と、本人があらかじめ人選する任意後見に分かれます。

 後見人は本人の日常生活を見守る役割も期待され、制度は親族を担い手の中心として想定しています。利用者の99%は法定後見です。しかし一人暮らしが増え、65歳以上の世帯のうち独居は2022年に3割を超えました。家庭裁判所は親族に適任者がいないと判断し、専門職を選ぶ傾向があります。2024年に選任されたのは司法書士が29%、弁護士が21%と多く、親族の17%を上回りました。

 後見人に選ばれた専門職の横領などは2015~2024年に243件発生し、被害額は13億5千万円に上っています。プロ後見人の使い込みは言語道断ですが、懸念はそれだけではありません。本人や家族の思いと、家庭裁判所が選んだ法定後見人の意向とのズレを訴える声も多く聞かれます。全体の1%に低迷する任意後見の利用状況が問題視されています。任意後見は必要なサポートや人選について本人や家族が話し合って決めるため、法定後見よりも本人の意思が尊重される仕組みです。

(2026年3月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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