財閥やグループ間で持ち合ってきた政策保有株式の売却が進んできています。政策保有株とは、企業が取引先との関係維持や強化を狙って保有する株式で、日本企業は、戦後安定株主作りの一環として取引先や財閥、グループ間で株式を持ち合ってきました。金融機関と事業会社、メーカーと下請け、製造会社と販売会社などで相互に株式を保有する持ち合いの形も多くなっています。企業統治が形骸化するとして批判が根強く、投資リターンが低い政策株も多く、資本効率の悪化を招いているとの指摘もあります。互いが物言わぬ株主となるため、経営の規律が緩んで少数株主の意見が反映されにくくなるとして、海外の機関投資家などから批判されてきました。
2010年から、上場企業は政策保有株式について有価証券報告書で開示することが求められるようになりました。銘柄数と保有額の大きい銘柄については、具体的な保有目的を開示しています。2023年からは、営業上の取引や業務上の提携など具体的な開示が必要になりました。企業は、利益をほとんど生まず資本効率が悪化する政策保有株の売却を検討するようになってきています。
野村資本市場研究所によれば、上場企業の持ち合い比率は2022年度に7.7%でした。1991年度の34%からは大きく減っていますが、減少ペースは落ちています。米議決権行使助言会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズは、政策株の保有額が純資産の20%以上の場合、経営トップの選任議案に反対推奨する方針を掲げています。
(2024年7月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)