若い社員が多い企業が新しい健康保険組合を設立しています。中高年層の加入者が多い全国健康保険協会である協会けんぽを離れ、保険料負担の抑制を狙っています。新興企業の従業員らが、6月1日にVCスタートアップ健保を創設しました。180事業所のおよそ1万人が加入しています。
健保組合は独自に保険料率を定められるのが特徴であり、新組合は労使合計で月の給料の8.98%に設定しています。従業員らが以前に入っていた協会けんぽの料率は全国平均で10%であり、低く抑えています。企業も従業員も毎月の保険料負担が軽くなり、その分を給与として還元することも可能となります。新たな健保組合の加入者の平均年齢は35.5歳で、協会けんぽの46.2歳と比べて若くなっています。
若者が多い企業が離れた協会けんぽは、4,000万人ほどの加入者をかかえる日本最大の公的医療保険の運営者です。自前で健保組合をつくれない主に中小企業の従業員らが集まっています。高年齢化が進んでおり、加入者の平均年齢は2022年度までの10年間で2.2歳上がっています。協会けんぽには、毎年1兆円規模の公費が投入されています。医療費が比較的少ない若者らの脱退は痛手となります。
一方の健保組合は、大企業を中心に個々の企業が設立する事例が多く、基本的には独立採算で運営しています。日本の医療保険制度には現役世代が65歳以上を支える仕組みがあり、健保組合は年4兆円弱を拠出しています。負担に耐えられず健保組合を解散する動きは少なからず見られ、2008年度に1,500近くあった組合は現在1,400を下回っています。
医療保険制度を巡っては、国民健康保険も財政難に直面しています。国保の加入者はかつて農業従事者と自営業が多かったのですが、産業構造の変化で、退職した高齢者や非正規労働者が多くを占めるようになってきています。加入者の医療費は高く、収入は低いため、国や地方自治体からの財政支援などでしのいでいる状況にあります。
(2024年6月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)