最高裁裁判官の国民審査の結果によれば、審査対象となった6人全員が信任されましたが、罷免を求める投票の割合は6人全体でみると10%を超えるなど、約30年ぶりの高水準となっています。不信任の割合が10%を超える裁判官は2000年の国民審査を最後に出ていませんでした。
国民審査は憲法79条で規定されています。有権者は、辞めさせたい裁判官に×を書き、信任する場合には何も記入しない。有権者が最高裁裁判官の適否を直接投票で決める制度は、世界的にも珍しいとされています。司法権の独立のため手厚い身分保障を受ける裁判官に対し、三権分立の観点から国民に罷免権を与える趣旨とされます。
今回の不信任率の高さについては、SNSなどで自ら材料を集め、積極的に投票した有権者が増えた結果ではないかとも考えられます。裁判官も一層国民にみられていると感じるようになり、有権者にとっても審査の意義を確認するようになってきています。
(2024年10月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)