東京都が直面する住宅課題

約1,400万人の人口を抱える首都は、都市開発の進展や少子高齢化に伴う多くの課題に直面しています。火災のリスクが高い木造住宅密集地域の解消と共に、高層マンションを含む集合住宅の災害対策も重要性が増してきています。国勢調査によれば、15階建て以上の共同住宅に住む都民は、2020年に約63万人に達しています。2005年から2.6倍に増えています。都の首都直下型地震の被害想定は、エレベーターの停止によって高層階の住民が孤立する恐れなどが指摘されています。
電気や水道などのインフラが長期間途絶した場合、高層階で物資の補給やゴミ処理などに困り、在宅避難を続けるのが難しい住民が多く発生しかねません。都は、2023年にマンションの防災に特化した冊子を都内の全世帯に配布しています。管理組合など向けに防災セミナーを始め、停電時でも住民が在宅避難を続けられるように、発電機や簡易トイレなどの購入費を上限額の範囲内で補助しています。
空き家解消も首都の課題の一つです。都内の空き家は2023年10月時点で89万戸と、2018年から1割増えています。うち賃貸用や別荘などを除く長い間不在で使用目的がない放置空き家は、21万戸にも達しています。住宅総数に占める空き家の割合は11%で、10万戸に腐朽や破損があります。
空き家は災害時の損壊リスクも高く、未然に防ぐような対策が求められます。景観の悪化は街の活性化にもマイナスです。都には資産承継の準備など空き家予防の啓発に一段と力を入れるべきです。

 

(2024年6月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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