小池都政の8年間、東京都の合計特殊出生率は低下し続け、ついに1.0をきりました。これまで様々な少子化対策を打ち出してきましたが、いずれも出生率を増加させるには至っておりません。現職の小池都知事は、子育て教育にお金がかからない東京を目指すと述べ、都が昨年度に始めた0~18歳全員向けに月5千円支給、高校授業料実質無償化の所得制限撤廃に加え、保育料無償化の拡大なども進めるとしています。
教育費は全国的に年々増えています。文部科学省の調査によれば、公立中学生でも1人あたり年53.9万円で、約20年間で約10万円増えています。近年、中学受験生が増えていることもあり、都は都内より教育費がかさむとして月5千円支給を決めています。
未婚者は全国的に増えていますが、東京都の男女の生涯未婚率は、男性32.2%、女性23.8%で全国最高です。ワンルームマンションが普及し、職や娯楽が多い東京は、単独世帯に適した生活環境があります。周りに未婚者が多いことも影響を与えています。年々上がる教育費などを背景に、今や結婚・出産をコストと考える若者が増えています。
子育て世代に幅広く給付や支援をしてきた現都政の施策は、10年前であれば効果をもたらしたかもしれません。現代の子育て世代のカップルは、018サポートがあったとしても、子どもを持ちたいと思いません。支援が足りないのであるから、助成を増やせば若い世代が子どもを持ってくれるという時代は過ぎてしまいました。収入が増えても、出生率の低下に歯止めがかかる兆しは見えません。もう1人、子どもを持ちたいと思える環境づくりが必要です。
今後の少子化対策においては、支援慣れしている若い世代にとっては、社会の意識のイノベーションが重要な鍵となります。結婚という形態を取らなくても子どもが持て、選択的夫婦別姓が認められる、自らの生き方を自らが決定することができるような社会を形成することが、少子化対策の喫緊の課題です。
(2024年6月23日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)