他大学では以前から実施されている推薦入試が2016年度の入試から、東京大学においても導入されることになった。定員は100名で、各高校が推薦できるのは男女各1名である。これまでの学力試験は高等学校教育に準拠しており、高い評価と信頼を得ているとしながらも、育てたい学生像や多様な学生構成を実現するためには、より柔軟な選抜システムを導入すべきであるとの結論に至った。東京大学では、わが国の文化や歴史観を含め、国際的な広い視野を持ち、高度な専門性を有し、自ら行動する人物の育成を目標としている。
東京大学の使命は、世界有数の研究大学として、その人的、物的資源を最大限に活用し、有能な人材を社会に輩出することである。推薦入試の導入により、教職員の入試業務の負担増や費用対効果を懸念する声もある。しかしながら、これまでの入試のような筆記試験だけに頼らず、高校における活動全体を評価する入試制度は、個性を発揮する上で大変意義深いものがある。こうした新しい制度を開始する際に必要なことは、事後の検証が必須である。制度導入による客観的評価が大切である。これまでの推薦入試を実施している大学においても、導入によるメリット・デメリットの評価が十分にできているとは言い難い。
(2014年9月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)