次世代認知症薬の開発

 米国アルツハイマー病協会によれば、2024年1月1日時点で127種類のアルツハイマー病新薬候補の治験が進んでいます。このうち約18%がアミロイドを標的とし、約9%がタウを標的としています。世界の認知症患者は2030年に7,800万人、2050年には1億3,900万人まで増えるとの予測もあります。新薬は病気の進行を遅らせたり、根本原因に対処できたりする可能性があります。

 アルツハイマー病は、発症前から患者の脳内にアミロイドβというたんぱく質が蓄積することが分かっています。その後タウが蓄積し、徐々に脳神経細胞が破壊されます。脳神経の細胞が壊れることで認知機能に異常を引き起こします。タウの蓄積を防ぐことで認知機能の悪化抑制や改善効果が期待されています。

 製薬各社が新しい技術を用いた認知症薬の開発に動いています。バイオジェンは、たんぱく質の設計図であるmRNAなどに直接作用する核酸医薬という手法により、アルツハイマー病の原因物質の一つとされ、細胞内に蓄積するタウの生成を抑えようとしています。

 アミロイドが神経細胞の外側にたまるのに対して、タウは細胞の内側に蓄積します。従来、タウを標的とした研究開発のハードルは高かったのですが、近年はタウに関する研究が進み、創薬技術も高度化しています。タウは神経細胞の死亡、ひいては認知症に直接関わっている可能性があります。核酸医薬は、細胞内でタウの生成を抑えられるアプローチとして注目されています。

(2024年11月21日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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