少子化を考えるうえで大きく二つのことを考えなければならないと思います。一つは出産時の経済的な問題を含めたあらゆる不安要因の解消で、生みやすい環境を整備することです。もう一つは、子育てをしながら就労しやすい環境を整備することです。
生みやすい環境については、女性が安心して妊娠・出産を迎えてられる状況をつくっておくことが大切です。生殖年齢にある女性が減少しているため、生まれる子どもの総数は減少していますが、最近合計特殊出生率が少し上向き始めています。一つは出産育児一時金が38万円より42万円に増額され、各医療機関に直接支払われるようになりました。これにより都市部を除いたほとんどの地域で分娩費用を準備せずとも出産することができるようになりました。また、これら支給額の増額により、分娩費用の地域格差は徐々に解消され、全国の分娩施設ではほぼ40万円以上の分娩費を取れるようになり、分娩費用の適正化がはかられるようになってきました。2009年よりこれに年間約400億円が増額されています。
妊婦健診には公費助成が行われています。患者が医療機関に通うたびに約5000円を目途に公費で負担されています。一般の健診を受けるだけなら、ほとんどお金を払う必要がなく、これまでその助成は5回だけの補助でしたが、14回までに増やされています。2008年より補正予算として780億が計上されました。この支援は若いカップルにとって有益ですし、何といっても「未受診妊婦」を減らすうえで大きな意義があります。06年に起こった大淀町立大淀病院事件は、妊娠20週まで健診を受けていなかった妊婦が夜間いくつかの病院で断られ、救急搬送されて流産したという事件でした。診療費を払わずとも妊婦健診が受けられれば、このような未受診妊婦は減少してくると思われます。
妊娠に対する公的助成を適切に行い、合計特殊出生率を上げる。これはまず女性が子どもを産む状況になる観点から、非常に大切な取り組みです。05年の1.29を境に徐々に上がってきました。出産育児一時金の増額および妊婦健診の公的助成の拡大の二つの施策が有効に作用した結果といえます。 Ⅲにつづく
(吉村やすのり)