止まらない少子高齢化Ⅰ~危機的状況の自分ゴト化と、安心して産み、育てられる環境づくり~

2005年に1.26だった合計特殊出生率が2011年に1.39まで上昇し、あたかも少子化が回復傾向にあるようなニュースが独り歩きしましたが、一方で出生数は前年比およそ2万人減の105万698人と過去最少となりました。

また並行して晩婚化が加速し、第1子出産時の母親平均年齢が前年から0.2歳上がって30.1歳と初めて30代に突入するなど、依然として日本社会が危機的状況にあることを忘れてはなりません。実際このペースで進むと2055年には出生数が年間50万人を下回り、65歳以上の高齢化率は40%を超える計算となり、年金や社会保障の問題以前に国家存続の危機に立たされるのです。

世界を見渡しても、人口が減少している国は少数であり、アメリカ、イギリス、フランスやスウェーデンといった多くの欧米諸国では今後も人口が増え続けると予測されています。わが国と同様に人口が減少すると考えられているのはドイツやイタリアだけであり、今後わが国は他の先進諸国に例のない急速な人口減少に直面することになります。日本と同じ少子化に苦しんでいるのがお隣の韓国です。

諸外国の合計特殊出生率は女性の労働力率と相関します。つまり、出生率が高い国では女性が働いている割合が多いことになります。諸外国においては女性が子どもを産んでも働きやすい環境ができています。逆に、わが国では女性が働いていると子どもを産めない社会や職場環境にあります。少子化と相俟ってわが国の高齢化率は欧米諸国と比べても2倍以上のスピードで上昇しており、少子化がこのまま進めば、労働人口の減少は深刻な問題となり、国内労働力不足、産業力の低下、国内産業のさらなる空洞化を招くことになります。そこで、10年後には出生率を1.50以上に上昇させることを喫緊の課題とし、そのための“女性が子どもを作り育てたいと思える”社会の形成をめざさなければなりません。

まず、本状況を国民すべてが認識し、自分ゴト化して少子化問題と真摯に向き合えるよう呼びかけ、また出産育児一時金制度の充実や妊婦健診の公的拡充などによる“安心して子どもが産める”環境づくりと、育児や介護負担の支援、さらには育児と仕事の両方の責任が果たしやすい職場環境の整備などの“子育てしやすい”環境づくりに早急に取り組まなければなりません。

                                           Ⅱにつづく

(吉村やすのり)

 

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。