氷河期世代の不遇

バブル崩壊後の1990年代後半から2000年代にかけて就職難で苦しんだ氷河期世代の不遇が続いています。現在40~50代前半にあたり、他の世代に比べると同じ正社員でも賃金の伸びが鈍くなっています。管理職の割合も下がっています。将来経済力の乏しい高齢層が膨らみ、社会保障の負担が想定以上に重くなってきます。
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によれば、2023年の20~30代の正社員の給与は、10年前の同世代より1万円あまり高くなっています。40代後半は1千円強しか増えていません。50代前半はむしろ減っています。仕事を見つけるのに苦労した氷河期世代は、正社員になった人も、その後のキャリア形成で不利な立場に置かれ続けています。より年長のバブル世代の層の厚さや近年の定年延長などの流れが影響し、昇進も遅れがちな傾向にあります。
終身雇用のような旧来の日本型の安定は期待できなくなっています。デジタル化などで求められるリスキリングもままならないようだと、昇給も昇進も得られない負のスパイラルが続くことになります。稼ぎの乏しい層が高齢化する影響は大きく、介護や医療は、収入の多寡で自己負担額や保険料が変わります。社会全体で負担と給付のバランスを保つのがますます難しくなります。
経済的な理由で結婚できなかった人も多く、単身高齢者は孤立で生活の質が下がって、健康を損なうリスクが大きくなります。氷河期世代は、日本の総人口の2割を占めています。いかに力を引き出すかは企業にとっても重い課題です。

(2024年7月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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