流動性知能と結晶性知能

流動性知能(Fluid intelligence)とは、新しい環境に適応するため、情報を素早く獲得、処理し、操作していく知能です。情報処理のスピード、直感力、新たな法則を発見する能力などを含んでいます。この流動性知能は加齢に伴って低下することが分かっています。
結晶性知能(crystallized intelligence)は、経験や学習によって後天的に獲得、蓄積される能力であり、年を重ねるほどに成熟していきます。様々な経験や知識をつなげ、相乗効果と深みを生み出すのは、結晶性知能のなせるわざです。
情報技術が急速に進歩する世の中で、経験への開放性が大切です。開放性とは、好奇心が強く、新しい経験への挑戦を好む特性で、知的な能力を維持するために効果を発揮します。最近では、開放性の高さは、記憶を司る脳の部位である海馬の体積とも関連することが報告されています。開放性は、加齢に伴い低下する傾向がありますが、年をとっても伸ばすことができると考えられています。
中高年から高齢期にかけて、多くの人が仕事から引退や子どもの自立といったライフイベントを経験します。それを新しい経験に挑戦するきっかけとして捉え、好奇心をもって取り組める活動を見つけることが重要です。40~50歳代から少し先を見据えて、時間ができたらやりたいことリストを準備するのも良いとされています。多様性のある生き方を目指すことが大切だと思います。

(2024年7月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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