高齢女性が妊娠を望む場合、まず自分の現在おかれている身体的状況の把握ができていないことが多いため、医師や看護婦からの治療的側面からの情報提供がまず必要になります。また、その女性が不妊治療を希望する場合、クライエントが不妊という状況をどのように捉えているか、そしてそれまでどのような体験をし、どのようにサポートを受けてきたかによっても心理的負荷の度合いは異なっており、ストレス反応には大きな幅があると考えられます。さらに、不妊治療前に合併症がないケースと、合併症を持っていたり、精神的問題を抱えているケースでは、求められるケアは異なります。
医師や看護師による面談にも拘わらず、不妊治療が長期化し、そのストレスが大きいと考えられる場合は、より専門的なケアが必要になることがあります。夫、家族、友人、同僚などから理解され難く、孤独感が強まり、自分自身のこれまでの人生に失望したり、治療の過程で自分自身の行動が決められなかったり、悩みを抱えての日常が長期に及ぶことなどにより、生活の質は大きな影響を受けることになります。このような場合は、精神科医や臨床心理士によるカウンセリングが必要となることがあります。
不妊治療以外の悩みをもって心理カウンセリングを受けるケースも少なくありません。たとえば、治療生活を送るうちに夫婦関係の問題が大きくなり、不妊治療遂行自体が難しくなる場合もあります。夫婦間のコミュニケーションが著しく悪化し、相手の行動や会話の仕方などでストレスが募り、治療を中止せざるを得ないこともあります。クライエントは、心理カウンセリングを利用することで自身の言動を正面で捉えることができるようになり、お互いの良好な関係を再構築できる場合もあります。
高齢妊娠では、やっとの思いで妊娠したとしても流産率は高くなります。長期の不妊治療後の妊娠であればある程、流産によって受けるストレスが大きいことは、容易に想像できます。流産後の恐怖感や高いストレスにより、次への妊娠への葛藤で精神的に不安定になることがあります。こうしたクライエントでも心理カウンセリングを受けることにより、流産した状況を受け入れたり、亡くなった子の存在をしっかりと受け止めた感覚をもつことができるようになります。長期にわたり不妊治療を行っているクライエントや流産を経験した高齢女性が、安定した心理状態で前向きに治療に取り組めるようにするには、医師による治療的側面からのサポートのみならず、看護師を中心とした看護カウンセリング、さらにはメンタルケアとしての臨床心理士によるカウンセリングが大切になります。