日本産科婦人科学会と日本産婦人科医会は、10年後の産婦人科医の数を試算した。それによれば全国平均で7%増加する見込みであるが、その増加は大都市が中心であり、地方においては急減するといった試算を示した。国が医学部定員を増やしているため、医師全体の数は12%増と増えているが、産婦人科医の増加率は4.5%と極めて低率である。
産婦人科においては、女性医師が占める割合は高く、特に20代や30代の若手医師の6割以上が女性である。女性医師は仕事と家庭、子育てを両立させることが難しく、そのため妊娠・出産を機に分娩の現場を離れる女性医師が多い。女性が分娩の現場でも継続就労可能な環境を提供できなければ、わが国の周産期医療提供体制は維持することができなくなるであろう。7~8年前におきた産科医療の危機的な状況は、3~5年後、また起こりうるものと考えられる。このままの状態が続けば、地方においては、分娩する病院まで50km以上、1時間以上かけて通うことが稀ではなくなり、安全性の確保が担保できなくなるであろう。
(2014年10月19日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)