社会保障の支え手増加

 少子高齢化は、社会の支え手が相対的に減るという生物学的な変化です。経済成長で社会保障の財源が確保できるとまで期待するのは楽観的過ぎます。支え手が増えれば支えられ手もその分減少します。その結果、1人当たりの負担増や給付削減に頼る度合いが弱まり、改革をはるかに進めやすくなります。

 少子高齢化の下では、生産年齢人口である15~64歳の総人口比が低下していきます。通常であればこうした人口構成の変化は、社会の支え手の比率の低下と捉えられます。しかし、社会の支え手は実際に働く人たちです。そこで就業者数の総人口比を見ると、2010年頃から上昇に転じています。女性就業の高まり以上に、高齢者就業率の上昇が顕著になっています。定年延長や年金支給開始年齢の段階的引き上げなどがその背景にあります。これまで支えられる側にいた人たちが、支える側に移っています。

 健康で働く能力も意欲もあるのに、制度要因が高齢者の働く意欲を削いでいる状況は、明らかに不自然だし不合理です。高齢者は既に労働供給を増やしつつあります。少子高齢化に正面から無理なく立ち向かうためには、支え手増加の動きを加速する改革こそ主軸に据えるべきです。社会保障制度の持続可能性が高まるだけでなく、労働供給の増加を通じて経済全体の供給能力も高まります。

(2026年3月5日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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