科学論文とAI

 AIが書いた文章を解析して論文に残る痕跡を突き止めた研究によれば、世界の医学研究の1割強が該当しています。またAIの使用により、特定の単語「these」と「significant」が論文中に増えています。AIで簡単に論文が執筆できるようになり、内容を精査する負担が増えています。粗悪な研究の量産につながれば、誤情報の拡散や質の高い研究が埋没することになり、科学の発展に悪影響を与えることになります。

 研究者は研究成果を論文にして発表します。まず執筆した段階で論文を投稿サイトに発表し、他の研究者から評価される査読を経て、科学誌に掲載されるのが一般的な流れです。質の高い科学誌に論文を多く掲載できれば、研究者の評価は高まります。この仕組みを揺さぶっているのがAIの存在です。

 科学研究にAIを取り入れること自体は利点も多く、仮説の生成や実験の解析ができます。研究効率を高められれば、科学の発展につながります。人間が気づかなかった視点から新たな研究成果につながります。しかし、論文執筆への利用では弊害が目立ちます。研究者数の増加などに加えて、AIによる論文投稿が増加しています。AI分野の著名な学会では投稿数が増えすぎて、論文を評価する研究者が足りなくなっています。評価の一部にAIを使う取り組みもあるものの、最終的な確認は人間の研究者が担っています。論文の精査に膨大な手間がかかっています。

 論文の執筆にAIをどこまで取り入れるべきかについては、研究者の間でも意見は分かれています。英科学誌ネイチャーの調査によれば、AIを使った校閲などの編集については9割以上が賛成と答えた一方、論文執筆への使用に関しては65%にとどまっています。ネイチャーでは、現状AIを論文の著者として認めていません。論文の内容は人間の研究者が責任を持ち、データ解析などにAIを利用した場合でも開示するよう求めています。

(2026年2月1日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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