脳死は生命維持装置がなければ心停止に至り、臓器の状態は急速に悪化します。患者の状態を管理するのは容易ではありません。国内での脳死下臓器提供者は、昨年過去最多の132例でしたが、多くの病院の医師には経験がないのが実情です。脳死の状態を評価するために、遠隔診療で脳死判定や臓器評価を支援するシステムが開発されています。
また、臓器移植では、取り出した臓器を保存できる時間の短さが課題となります。氷入りのクーラーボックスに入れても、保存時間は心臓で4時間、肺で8時間、肝臓で12時間に限られます。酸素などを含む保存液を臓器に循環させる機械灌流を利用すれば、保存時間を延ばせるとして注目されています。深夜に行われる手術を翌朝に先延ばししたり、同時に複数の臓器提供があっても、手術時間を調整できます。手術のタイミングをコントロールできるようになれば、医師や看護師、麻酔医の負担を大きく減らせます。
(2024年6月22日 読売新聞)
(吉村 やすのり)