長崎大学の研究チームは、摘出した肝臓に酸素などが含まれた保存液を装置で循環させ、患者に移植する臨床研究を計画しています。移植用肝臓の保存時間を延長できるメリットがあります。移植施設が逼迫し、臓器受け入れを断念するケースが相次いでいることが判明していますが、この技術が実用化されれば、治療態勢の強化につながると期待されます。
脳死者から摘出した臓器は、保存液に浸し、氷入りのクーラーボックスに入れて搬送しています。臓器を体から取り出しておける時間は、心臓で4時間、肺で8時間、肝臓で12時間に限られています。その結果、移植施設に相次いで臓器の受け入れ要請があっても、限られた時間で人員や病床を用意できず、受け入れを断念するケースが増えています。
摘出した肝臓の血管にチューブをつなぎ、保存液を循環させる独自の機械灌流装置を開発し、低温下で臓器に酸素や栄養を与え続けることで、臓器の保存時間を数時間延ばせるほか、機能の向上も見込めるとされています。臨床研究では、肝臓移植手術の前に、保存液を最長3時間循環させ、移植後の安全性や効果を検証します。海外ではすでに機械灌流技術が普及しています。
日本では、2022年に腎臓の機械灌流装置が厚生労働省から承認されていますが、費用面の課題などから普及が遅れています。肺でも一部の施設で数例試された段階にとどまっています。より長時間の臓器保存が可能になれば、深夜に行われる移植手術を翌朝に延ばすなど現場の負担軽減も期待できます。
(2024年5月29日 読売新聞)
(吉村 やすのり)