世界の稲作は進歩しています。減反開始前の1969年に日本は世界第3位の単位収量でしたが、現在は16位に低迷しています。この間、米国や中国にも追い抜かれています。農地の区画を大型化し、機械を導入してコスト削減努力を続けたとしても、単位収量が少なければコストで海外に太刀打ちできません。
日本の稲作の単位収量が停滞している背景には、気候と技術進歩の影響があります。かつて雨量の多い日本の気候は稲作の適地でしたが、耕作技術は進歩しており、今では必ずしも雨が多く降る地で水稲を育てる必要はありません。米カリフォルニア州では、シエラネバダ山脈に降る雨や雪を灌漑施設で引き込み、夏に雨が降らない地中海性の気候でも稲作可能としています。
日本の稲作の平年の単位収量は10aあたり536㎏です。まずは米国や中国と同じように毎年4㎏以上、単位収量を増加させ、2050年に655㎏を目標とすべきです。青森・山形・長野県には、平均で650㎏を超える市町村があります。栽培技術の改善に加えて適地適産を推進すれば、655㎏は十分に到達可能な数字です。
(2024年10月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)