紙幣の流通量は5月末で約120兆円と、2004年末の約78兆円と比べ5割増えています。家庭に眠るタンス預金の存在が大きく、4月時点のタンス預金は約58兆円と、この10年で倍増しています。低金利で銀行に預けるメリットが乏しいことや、相続税の課税強化などが背景にあるとみられます。
しかし、タンス預金はここ半年ほど減少しています。新札登場を前に旧札を減らす心理が働いたこと、日銀の金融政策変更、物価高で現金の価値が目減りしたことなどが影響しています。紙幣流通量も頭打ちです。
一方で、キャッシュレスは急速に進んできています。特に目立つのが、現金志向が根強いと言われてきたシニア層です。2023年の家計の金融行動に関する世論調査によれば、5,000円超~1万円以下の支払いに現金を使う人は60代で34%と、5年前の75%から半減しています。20代の35%と同じ水準です。世代間のキャッシュレス格差は急速に縮小しています。
キャッシュレス化が進み、硬貨では一足先に流通量が減り始めています。2023年は1~5ポイント減りました。増加傾向が続いた500円玉も、金融機関の預け入れ有料化などの影響で減少に転じています。
(2024年7月9日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)