妊娠のための教育講座 良いこといっぱい、母乳育児 ⅩⅩ

母乳には赤ちゃんにとって大切な栄養素が多く含まれています。妊娠末期になり、乳首をつまむと少し黄色をおびた透明な乳汁がでます。これが「初乳」です。生まれた直後の赤ちゃんは自分自身で感染を防御する能力をもっておらず、母乳中に含まれるさまざまな物質が赤ちゃんを感染から守っています。初乳中には赤ちゃんが感染しないように守る母親由来の重要な免疫グロブリンという物質や、成長因子が多く含まれています。出産後34日すると、脂質および糖質が豊富に含まれる成乳に変わります。出生直後の赤ちゃんのほっぺに乳首をふれさせると、反射的に吸い付いてきます。赤ちゃんがおっぱいを吸うとその刺激がお母さんの中枢に伝わり、下垂体の後葉よりオキシトシンというホルモンが分泌されます。母乳をだしたり、子宮を収縮させる働きがあるため、産後の子宮の回復にも役立ちます。授乳は母子の絆を確立する上でとても重要です。

 母乳栄養を行うと、お母さんは多くの病気になるリスクが減少します。糖尿病、肥満、メタボリック症候群、気管支喘息、アレルギーなどに効果があると言われています。妊娠糖尿病の妊婦さんは、将来健常な女性の7倍以上の頻度で糖尿病になりやすいことが知られていますが、授乳期間が長いほどその頻度が減少します。お母さんは授乳することによりエネルギーを消費して、産後早く体重が減少し、元の体重に戻りやすくなります。また、健康管理への関心が深くなり、喫煙率は低く、運動もするなど、健康的なライフスタイルを取ることとも影響していると言えます。

 一方で、お母さんが服薬している薬がある場合、お母さんが望んでも母乳栄養で育てられないケースもあります。また、赤ちゃんが未熟児で生まれた場合や赤ちゃんの体質によって母乳を与えることができないこともあります。しかし、最新の粉ミルクは母乳を参考に赤ちゃんに必要な栄養素を満たすように開発されているので、たとえ母乳育児ができないとしても心配する必要はありません。胸を張ってたくさんの愛情を赤ちゃんに注いでいきましょう。

(吉村 やすのり)

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