若い女性ががん宣告を受けた時-Ⅲ

 がんと告知された女性は、がん治療開始前の限られた時間内に妊孕性温存に関する判断をしなければなりません。がん治療によって妊孕性がなくなる可能性を考えながら、妊孕性温存のための医療手段を受けるか否かを自らが決定することになります。がん告知により不安や抑うつ症状がある中での妊孕性消失の可能性についての説明は、患者にとってはかなりの心的ストレスになります。医療サイドにとっては、原疾患の治療開始までの時間が限られている中で、患者や家族に対していかに正確な情報を伝えるか、そしていかにがん治療専門医や生殖医療専門医と密に連携を取ることができるかが大切となります。そのためには医師のみならず看護師、臨床心理士、薬剤師、ソーシャルワーカーなどから構成される医療チームの結成が不可欠になります。

 大切なことは、妊孕性温存の強い希望のある患者であっても原病の状況を正しく伝えることです。選択は患者自身がすべきことではありますが、あくまでもがんの治療を優先させることであり、患者の症状によっては妊孕性温存を断念せざるを得ない状況を正しく患者に伝えなければなりません。その際には十分な説明後、何よりも患者に納得してもらうことが大切であり、不要ながん治療の延期や中止は避けるべきです。

(吉村 やすのり)

カテゴリー: what's new   パーマリンク

コメントは受け付けていません。