妊孕性の強い希望のある女性が浸潤性の子宮頸がんに罹患した場合、最近では子宮体部を温存する広汎性子宮頸部摘出術が行われるようになった。この術式はわが国においては、慶應大学で初めて行われた。現在までに154例で実施され、そのうち40例において妊娠が成立している。しかしながら自然妊娠や人工授精における妊娠においては、感染による流産や早産が多いこと、妊娠率が低いこともあり、現在ではほとんどの症例で体外受精・胚移植が実施されている。
妊娠が成立したとしても流産や早産が多くなる。慶應大学の成績では、22週未満の流産が24%、32週未満の早産が27%を占めている。そのため妊孕性の希望の強い女性に対して、広汎性子宮頸部摘出術を実施する際には、がん治療としての根治性が保証されていないこと、妊娠率が必ずしも高くないこと、妊娠するためには体外受精を実施する可能性が高いこと、妊娠しても早産率が高く、必ずしも生児が得られるわけではないことを、術前に十分にインフォームドコンセントすることが大切である。
(生殖医療の未来に求めるもの:吉村泰典)
(吉村 やすのり)