日本経済はこの30年間低成長を続けてきています。企業は最高益を更新し、株式市場は活況に沸いているにもかかわらず、景気回復を実感できません。将来の成長に向けた設備や人への投資に力を入れず、賃上げや消費の活性化につなげてこなかったためと思われます。
企業の利益はもっと速いスピードで増えています。法人企業統計によれば、2024年度の経常利益は114.7兆円と30年前の5倍以上になっています。内部留保は637.5兆円で4.6倍に膨らんでいます。しかし、設備投資は54.3兆円でわずか28%の増加に過ぎません。企業が利益をため込み、十分に投資してこなかった姿が浮かび上がっています。
人への投資も足りません。賃金総額は伸びても、物価上昇に追いつかなければ消費は活性化しません。厚生労働省によれば、物価変動の影響を除いた実質賃金は30年以上にわたってマイナス基調となっており、2024年度も前年度比0.5%減に沈んでいます。こうした利益重視の姿勢は株式市場で高く評価されています。利益や株価の伸びに伴って、なぜか投資は増えていません。バブル期以来の苦い経験が抜けきらず、成長よりも安全を求める傾向は今も残っています。

(2025年11月27日 読売新聞)
(吉村 やすのり)





