日本対がん協会の調査によれば、地域のがん医療の拠点となっている病院の約98%が、認知症のがん患者への対応で困ったことがあると回答しています。高齢化が進み、認知症のあるがん患者が増えていますが、対策が追いついていない実態が明らかになっています。
本人が治療について判断できないが93%と最も多く、次いで在宅での治療を支える家族がいないが77%です。ほかに、在宅での抗がん剤治療の副作用などを周囲に伝えることができないが64%、適切な食事管理ができないが63%、入院中のリハビリを拒否するが60%などです。
認知症を確認する検査は、がんの治療方針を決めるための重要な判断材料となります。入院前後に認知症かどうかを確かめるスクリーニングテストを実施していると答えた施設は22%に過ぎません。退院時に認知症患者の精神状態について、在宅医療に申し送りする項目があるとした施設は48%でした。
認知症があっても何もわからず、何も決められないわけではありません。分かりやすい言葉で医療者が説明すれば、大半の人の希望を引き出せます。がん治療後は、倦怠感や不眠など様々な症状が出ることが多く、地域と病院の連携を深め、本人が望む場所で安心して暮らせるよう支えていくことが大切です。
(2024年7月15日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)