厚生労働省研究班が5月に発表した調査結果によれば、2022年時点で全国に443万人いるとみられます。65歳以上高齢者の約12%です。2030年には523万人、2040年には584万人で高齢者の約15%となりそうです。年齢が上がるにつれて認知症が増えることも分かりました。65~69歳では全体の1%ほどですが、90歳以上では約半数となります。人口の高齢化に伴い、認知症の人が増えるのは避けられない状況です。
2015年公表の推計では、認知症の人は2025年で700万人前後の見通しでした。この減少は、喫煙率の低下や高血圧など生活習慣病の改善が影響した可能性があります。しかし、今回の調査では、認知症予備軍である軽度認知障害(MCI)の人が2030年に593万人、2040年に612万人になると推計されています。予備軍の人たちは、健康状態などですぐ認知症になりかねないので安心はできません。経済産業省の推計では、介護のための経済損失が2030年時点で年9兆円にのぼります。
政府は、今年認知症の人と共に生きる社会を実現するための認知症基本法を施行しました。認知症の人の意見を聞きながら、認知症の人が希望を持って暮らせるよう、社会の各分野で取り組みを進めるとしています。認知症の人向けにAIを使ったサービスの開発を始める企業が出てくるなど、対応が進むことが期待されます。これだけ人数が増えると、介護や医療の制度だけで対応するにも限界があります。多くの国民が認知症を理解し、協力していくことが必要です。
国は、2005年から地域や職場で認知症の人やその家族を支えるための認知症サポーターを養成しています。認知症に関する基礎知識や認知症の人への対応の方法などについて講習を受けることで、誰でもなることができます。自治体などが講習を開いており、受講してサポーターになった人は、2024年3月末時点で1,535万人もいます。
(2024年7月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)