政府の経済財政諮問会議は物価上昇を上回る賃上げを実現し、消費の拡大や生産性を高める方策を探っています。労務費の価格転嫁や交易条件の改善、デジタル活用が欠かせません。非製造業の労働生産性は製造業と比べて停滞しています。財務省の法人企業統計によれば、2023年度の従業員1人あたりの付加価値額(労働生産性)は、非製造業が728万円で、30年前と比べて3%の伸びでした。製造業は36%上がっています。
賃上げの原資を確保するための価値転嫁は進んでいません。日本商工会議所の調査によれば、労務費の増加分の4割以上を価格転嫁できた企業は36.8%にとどまっています。輸出物価を輸入物価で割った値である交易条件の悪化も賃金の伸びを抑える要因となっています。交易条件の悪化は、日本人の所得が海外に流出することを意味します。原材料の購入は、円安の進行もあって、支払いがかさんでいます。
(2024年11月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)