富裕層の実効税率の低さや、資産管理会社などを使った税逃れを問題視し、所得や資産に見合った税負担をしてもらおうとする動きが出てきています。一部の超富裕層に財産が偏れば、貧富の差が拡大して国の持続可能な経済成長が難しくなる懸念が出てきます。
欧州の調査機関であるEUタックス・オブザーバトリーの報告書によれば、10億ドル(約1,500億円)以上の資産を持つ富裕層は、東アジアと北米にそれぞれ800人以上、欧州には約500人います。世界全体では計12兆ドル超の財産を保有しています。富裕層の資産の多くは株式ですが、所有企業に配当を支払わないよう指示するなどして課税を免れています。
EUタックス・オブザーバトリーは、10億ドル以上の資産を持つ富裕層の保有資産に最低2%分まで課税すれば、世界で約2千億ドルの歳入増が見込めると試算しています。先進国と新興・途上国の格差是正を重視したブラジルは、G20議長国として2月に課税強化を提唱し、今回の会議では閣僚宣言に盛り込んでいます。
(2024年7月28日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)