遺伝性腫瘍の発症リスクの検索

 特定の遺伝子に、生まれつきがんになりやすい特徴があることで起こる遺伝性腫瘍は、がんになった人の5~10%とされ決して珍しくはありません。遺伝性腫瘍には、遺伝性乳がん卵巣がん症候群、リンチ症候群、リー・フラウメニ症候群、網膜芽細胞腫などが知られています。いずれも、若年で診断される、同じ種類のがんと診断された血縁者がいる、一人が複数のがんになるといった特徴があります。

 がんの組織をとって調べ、治療薬を探すがん遺伝子パネル検査をして、遺伝性の腫瘍とわかることもあります。しかし、正確に調べるためには、血液を使って遺伝子の検査をします。公的医療保険の対象は、乳がんや卵巣がんなどを発症した人がBRCAの遺伝子を調べる時など、一部に限定されています。BRCAの検査については、今後、診断された人の親や子、きょうだいに限り、未発症の人も保険の対象になる予定です。

 特定の遺伝子だけではなく、網羅的に調べる多遺伝子パネル検査(MGPT)もあります。10万円以上の自費診療になりますが、がん研有明病院では2019年に導入し、これまでに400人近くが検査を受けています。そのうち4分の1はがんの未発症者です。がんになりやすい特徴が見つかっても、全員ががんを発症するわけではありません。しかし、検査を受けることで、将来の予測が正確になったり、手術や薬の治療方針が変わったりする可能性があります。

 遺伝性の病気について、歴史的にネガティブに考えられていた時代がありました。家族や親族との関係が悪化したり、過去には遺伝性の病気やリスクがあるために生命保険に加入できないこともありました。2023年に成立したゲノム医療法は、遺伝情報による不当な差別を防ぐことを基本理念としています。保険業界は遺伝情報を収集・利用しないことを表明したり、厚生労働省は遺伝情報を根拠に望まない配置転換や解雇をしないことなどを雇用者に求めたりしています。

(2026年1月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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