食料品の消費減税

 OECDによれば、この30年物価の影響を考慮した働き手1人あたりの実質賃金は、欧米主要国で伸びているのに対し、日本は横ばいです。厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、昨年11月の実質賃金は前年同月比1.6%減り、11カ月連続のマイナスでした。物価高が本格化した2022年春以降、一時的な要因があった月を除いてマイナスが続いています。

 財務省によれば、年収200万円台の世帯の場合、消費税を年17.5万円払っています。このうち5.1万円が軽減税率(8%)の対象となる食料品と新聞にかかる税額です。一方、年収1,500万円以上の世帯が負担する食料品の消費税額は8.3万円で、200万円台世帯の1.6倍です。消費額が大きい高所得者ほど恩恵が大きくなり、物価高に苦しむ低所得世帯に的を絞れず、効率が悪くなります。

 食料品の消費税がゼロになると、消費者物価上昇率が1.7ポイント下がると試算されています。2026年度の上昇率はゼロ近くになり、実質賃金を改善させることになります。しかし、食料品は生活必需品のため、値上げにつながりやすく、一時的に物価は下がりますが、円安や価格転嫁ですぐに元に戻る可能性があります。経済の押し上げ効果も限定的です。

 日本では、受益と負担はセットだという感覚が薄く、税金への嫌悪感が強くなっています。仮に食料品の消費税をゼロにしても、各世帯にとっては月数千円の足しにしかならず、将来への不安は無くなりません。消費減税の先にどんな社会を望むのかを問うことが大切です。互いに支え合う仕組みを縮小して、自己責任で生きていく道を選ぶのかどうか、円安や金利上昇が進んでいることも踏まえ、考えることが大切です。

(2026年1月29日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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