総務省の消費者物価指数の高速バス代は、4月時点で108.3です。データがある2010年1月以降の最高値で、5年前の2019年4月に比べ12%高くなっています。高速バス代は2019年10月の消費増税に伴い大きく上がりました。新型コロナウイルス禍で緩やかになりましたが、2022年から再び上昇が加速しています。
背景には運転手不足があります。元々希望者が少なく、残業規制で担い手が不足する2024年問題にも直面しています。需要が回復傾向にある一方で、繁忙期でも以前ほど増便できなくなっています。収益確保のため需要が高まる日には単価を上げています。予約に合わせて柔軟に増便していた企業で、運転手が足りずこれまでのように増やせない例が増えています。
円安で訪日客は増え、日本人の国内旅行も伸びています。主要都市や観光地では宿泊予約が取りづらくなっており、夜行バス代は宿泊代込みと考えれば、値上がりしてもお得感があります。ホテル代わりなら高くても快適に過ごしたいという要望に応えた高速バスもあります。かつて夜行バスは若者の手頃な移動手段でした。タイムパフォーマンス重視の流れで、魅力が改めて見直されています。
(2024年5月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)