高齢者は複数の医療機関にかかることも多く、その度に薬を処方されることがあります。厚生労働省によれば、75歳以上の4割は5種類以上の薬を使っています。6種類以上の薬を使っていると、ふらつきやめまい、便秘、食欲低下などの有害事象が増えるとされます。医療DXを使用し、高齢者で問題となっている多剤服用による有害事象であるポリファーマシーを減らしたり、健康寿命の延伸につなげたりすることが期待されています。
医療機関を受診した患者が、マイナ保険証を提示して同意すれば、医師は診察時に他の医療機関での受診歴や薬の処方情報を閲覧できます。重複して複数の薬を処方されている場合には、薬を減らすよう患者に提案できます。また、生活習慣病といった経過の長い慢性的な病気が主流となる中、国民一人ひとりに健康への関心を高めてもらう狙いもあります。
健診結果や受診歴に加え、日々の歩数や血圧など、民間のヘルスケアサービスとデータを連携させて、健康寿命の延伸につなげることが検討されています。自分で健康状態を把握することで国民全体の健康に関するリテラシーが上がり、医療や介護の周辺サービスが発展します。そこまでいくと医療DXがうまくいったと言えるのではないでしょうか。
(2024年6月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)