東京・池袋での乗用車暴走事故は、高齢ドライバー対策を強化した道路交通法改正のきっかけになりました。改正道交法は2022年5月施行され、75歳以上の免許更新で、認知機能検査に加え、一定の違反歴があれば実際に運転し、一時停止などの課題をこなす実車試験を課すようになりました。
警察庁によれば、75歳以上のドライバーの死亡事故発生率は、2023年に免許人口10万人当たり5.27件で、2021年より約7%減少しています。対策強化に一定の効果が認められています。一方、2023年の死亡事故件数は384件で、2021年より約11%増加しています。75歳以上の免許保有者が2年間で118万人増え、発生率が下がっても事故件数は増えています。免許保有者は今後も増え続け、2025年以降は800万人を超えると推計されています。
団塊の世代が75歳以上になる2025年からが、高齢ドライバーの激増時代に入ります。免許更新時に認知機能と視力だけでなく、健康面を総合的に医師がチェックする必要があります。都市と地方では異なり、車以外の交通手段に乏しい地方在住の高齢者への配慮が必要になります。免許返納後の生活支援の充実など、医療や福祉分野と連携した対策が必要です。
(2024年5月30日 東京新聞)
(吉村 やすのり)