昨年よりわが国においても母体血による新型出生前遺伝学的検査が開始された。妊娠初期の女性から血液を採取し、胎児の染色体異常を判定する検査であるが、胎児のマススクリーニングにつながる可能性もあり、現在、遺伝カウンセリングを行うことを前提に臨床研究として実施されている。このような遺伝子解析には、世界中の多くのベンチャー企業が開発を進め、わが国へも学会の指針を守らず検査を実施する企業が参入するようになってきている。後発ベンチャー企業は、先発企業より低コストで検査を実施できることを強調する。
このたび中国のベンチャー企業は検査を中止することとした。新しい検査法が開発された場合、検査の精度を医学的に検証することなしに企業のデータを鵜呑みにして検査を実施することは避けなければならない。検査結果がクライエントに与える影響は計り知れないものがある。
(2014年4月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)