わが国においては、これまで家族とは子どもをつくり、育て、労働力を再生産し、家を継承する生活共同体であると考えられてきた。法的に婚姻関係にある夫婦が子どもをつくり、子どもがまた新しい家族を形成し、そのきずなを重んじてきたというのが、わが国の家族観であった。しかしながら、性同一性障害のカップルにおいては、性別取り扱い変更の審判を経て性別を変更した場合においても法的な婚姻関係が認めらている。また昨年9月に最高裁が婚外子の相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定を違憲と判断している。これらの事実からもわが国の家族観や結婚観も変わりつつあるといってよい。
今後家族のかたちやきずなが多様化していくことは避けられない。家族とは夫婦関係や親子関係を守るためだけの制度ではなく、個人が幸福を追求できる共同体として捉えられるべきである。夫婦は別姓であっても事実婚であってもそれが問題ではなく、生まれた子どもが幸せであると感ずるような家族の形態が最も大切である。男女の法律婚が大前提であるとする伝統的な価値観を否定するものではないが、多様な家族関係を認めるような家族のかたちが模索されても良いのではないか。
(2014年4月13日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)