生殖補助医療を実施しているクリニックでは、毎日何例もの体外受精・胚移植が行われている。その際受精卵の取り違えがおこらないような厳重な管理が必要となる。新聞報道と同様にわが国においても、2009年に受精卵の取り違えによって、中絶を余儀なくされたカップルがあった。日本産科婦人科学会では、生殖補助医療の安全管理に関する見解をまとめ、会員に対して指導をしている。受精卵の取り違えはおこってはならないことであるが、取り違えの可能性は常にありうる。そのため、特に胚移植の際には細心の注意が払われるべきである。
最近では母体血を用いた新型出生前遺伝学的検査が行われるようになってきており、将来わが国でも報道のような事例が増えるかもしれない。現在の検査では親子鑑定は実施されていないが、希望するクライアントがでてくるかもしれない。イタリアでは過去18年間に4回受精卵の取り違えがおきている。
(2014年4月15日 日本経済新聞 夕刊)
(吉村 やすのり)