海外においては、生まれつき子宮のない女性や子宮を失った女性に対して子宮移植が実施されるようになってきている。これまでスウェーデンにおいてはブレンストレム教授のチームは9人の女性に母親親類の子宮を移植し、7人が成功したとの報告がなされている。既に胚が移植されているが、妊娠されたかどうかは明らかではない。
わが国においては慶應大学を中心とした子宮移植チームが産婦人科医と形成外科医らによりカニクイザルを使った実験を実施している。子宮を摘出後に再び元に戻した、自己移植を行ったサルで妊娠が成立しているが、他家移植はまだ成功していない。他人から臓器の移植を受けた場合、拒絶反応を防ぐためには妊娠中も免疫抑制剤を使用しなければならない。その際、胎児に奇形が起こる可能性は否定できない。生命の維持に関係のない臓器を移植することに是非やドナーに与える身体的リスクなど、様々な倫理的な課題が立ちはだかっている。
(2014年4月29日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)