乳がんは女性に最も多いがんで、40代後半より50代前半に発症します。年間約68,000人が発症し、日本人女性においては増加傾向にあります。50年前は50人に1人の女性が乳がんを患ったが、現在では12人に1人の頻度で発症します。治療には乳房の部分切除、腋容リンパ節の郭清、放射線照射、薬物治療(抗がん剤、内分泌療法薬)などがあり、これらを組み合わせた集学的治療が行われる。 乳がん組織のホルモン受容体が陽性なら内分泌療法が行われ、受容体が陰性の場合やリンパ節転移がある場合、さらに組織の悪性度が高い場合は、抗がん剤治療が選択されます。病気の進行がある場合にはまず薬物療法を行い、有効な症例ではその後手術療法を行うことがあります。
一方、子宮頸がんは、20代、30代の女性にもっとも多いがんで、年間1万人程が新たに子宮頸がんと診断されています。子宮頸がんは、性交渉によって感染するヒトパピローマウィルスが発症の原因です。性交渉の経験のあるすべての女性に発症の可能性があり、ウィルス感染した女性のうち、がんになるのは1%以下です。頸がんワクチンによる予防は可能ですが、接種時の痛みなどの副反応によって、厚生労働省がワクチン接種の積極推奨を中止しています。子宮頸がんには細胞診による検診が有効であり、進行前に見つかる可能性が高いとされています。ワクチンと検診を併用することにより、子宮頸がんの予防を可能となるだけに、性交渉を開始する前の女性に対し、一日も早い子宮頸がんワクチン接種が望まれます。
(2014年7月18日日本経済新聞夕刊)
(吉村 やすのり)