九州電力の川内原子力発電所が立地する鹿児島県と同県薩摩川内市は、原発事故時に甲状腺被曝を防ぐ目的で、安定ヨウ素剤を原発から半径5㎞圏内の住民に一斉配布しました。原子力規制委員会の指針に基づくヨウ素剤の配布は全国初である。東京電力福島原発事故の際には、配布に時間がかかり服用できなかったことが多かったことを教訓に、有事に備える事前の策である。
チェルノブイリ原子力発電所事故後の疫学調査において、被曝と甲状腺がん発症との関連が明らかとなりました。ヨウ素は甲状腺ホルモン原料として使用され、放射能活性を有したヨウ素(今回、その飛散が懸念されている)も安定ヨウ素(食物などから日常摂取しているヨウ素)と同様に甲状腺に取り込まれ、甲状腺がん発症危険を増大させる。余分なヨウ素は速やかに体外に排泄されるので、安定ヨウ素(製剤としてはヨウ化カリウムがある)を服用することにより、放射能活性を有したヨウ素の甲状腺への取り込み減少を図ることができ、甲状腺がん予防にも効果的であることが証明されている。
しかし、安定ヨウ素の過剰摂取は胎児(母親が摂取した場合)、新生児、小児においては甲状腺機能低下(脳の発達に負の影響あり)が副作用として懸念される。したがって、妊婦婦人や授乳婦人にヨウ化カリウムを投与した場合、新生児、乳児の甲状腺機能について、注視しフォローアップする必要がある。
(吉村 やすのり)