医学部の入学定員は、1973年医学部のない県を解消しようと「無医大県解消構想」が決定され、各都道府県に1つ以上の医学部が設置された。当時の目標は人口10万人当たり医師150人であった。その後82年に入学定員を減らす方向に転換し、1983年に8,280人であった定員は減少しはじめ、2007年までには7,230人前後で推移するようになった。ところが高齢化社会の進展や地方での医師不足が顕在化し、2006年には「新医師確保政策」が決定され、医学部定員を増やすことになった。各大学で10~30名程の定員が増やされ、2014年には過去最高の9,069人になった。
しかしながら、現実には地方大学卒業後に地方を離れ首都圏の都市部で就職する医師が多く、地方とくに東北地方の医師不足は解消されていない状況が続いている。東日本大震災や福島の原発問題が追い打ちをかけている。医師の偏在、医師の数の地域格差が大きな問題となっている。東北地方における医学部の新設は、卒業生が東北地方に残り、地域の医師不足を解消するために準備されている。2016年にも東北地方に医学部が誕生するが、この新設は1979年の琉球大学以来37年ぶりということになる。
(2014年7月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)