代理出産報道に憶う

オーストラリアの夫婦が、タイの女性に代理懐胎を依頼し、生まれた双子の1人がダウン症であったため、健常児の1人だけを引き取り、ダウン症児の引き取りを拒否するという事態が起きた。海外においては、胎児に異常があった場合、中絶を強要したり、引き取りを拒否したり、代理懐胎をした女性が死亡したりするなど、代理懐胎を巡ってはさまざまな問題が起きている。今回のケースは、依頼者夫婦が出生前診断でダウン症であることが判明した時、中絶を希望した。しかしながらタイにおいて人工妊娠中絶は許可されておらず、代理懐胎女性は中絶を拒否し、妊娠を継続し分娩した。オーストラリア夫婦の行動は、倫理的に決して許される行為ではない。タイの女性は貧しさがゆえに代理懐胎を引き受け、ダウン症児を自分の子として養育している。

代理懐胎の適用は、生まれつき子宮がない女性や病気などが理由で子宮を摘出した女性である。最近ではクライエント夫婦が卵子と精子を提供し、体外受精を行い、受精卵をつくり、その胚を第三者の代理懐胎をする女性に移植する体外受精型代理懐胎がほとんどである。代理懐胎の是非については、日本学術会議は2008年に営利目的での代理懐胎を禁止するとの声明を出している。現在、自民党の生殖補助医療に関するPTでは、代理懐胎を限定的に容認する案を出しているか、まだ法案は提出されていない。

(生殖医療と生命倫理:吉村泰典)
(吉村 やすのり)

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